今夜真白く降る雪は、わたしからあなたへ送る

ちらつき始めた雪が音も無く積もってゆく傍ら、キミと歩いた椛の紅い坂道、手を取り合ってずぶぬれになった碧の月光が照らす山の小川。覆い隠すように全てを冷たく抱いてしまう雪。まるで想い出も一緒に消してしまうみたいに。いつか、交した小さな約束を叶えることはできなかったよ、ごめんね。きっとこの雪が溶けるころにわたしがキミの隣にいることはないだろうから、どうかあんな小さな約束も一緒に雪へ溶かしてしまって。春になったら全て、全て忘れてしまってね。だけどどうか、こんなわたしを愛してくれたキミだから。どうか、この雪が溶けるまでは忘れないでいて。どうか、この雪の中ではキミはわたしのものであって。雪を踏んでキミへ逢いに行く事はできないけれど、真白な紙にあなたの幸を願って、いま雪の文あなたに送ります。